伸筋の触診できている? 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の評価と理学療法!

こんにちは!カタ(@katalogpt)です!
みなさんは、肘関節疾患を診る機会は多いですか?
カタ
あんまり診ないですね。野球肘をたまにみるくらいです。
新人理学療法士
整形外科のクリニックや、整形外科に力を入れている病院では、肘関節疾患を診る機会は多いと思います。
今回は、テニス肘とも言われる上腕骨外側上顆炎についてお伝えします!
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上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは
上腕骨外側上顆炎の症状
テニス肘と言われるように、テニスのボールを打つ、ラケットを振るといった動作で痛みがでます。
日常生活では、物を持ち上げたり、タオルをしぼったりする際に痛みを訴えることが多いです。
また、安静時痛をあまり訴えないのも特徴です。
痛みを訴える部位は▼のように、伸筋の共同腱が付着する部位に多いです。
上腕骨外側上顆炎の病態
上腕骨外側上顆炎は中年以降のテニス愛好家に多い疾患と言われていますが、明確な原因は不明です。
オーバユースが原因ではないかと臨床では感じています!
カタ
また、短橈側手根伸筋などが起始する、外側上顆の付着部症と言われています。
短橈側手根伸筋などって他にもあるってこと?
新人理学療法士
外側上顆には長・短橈側手根伸筋、総指伸筋が付着していて、さらにその深層には外側側副靭帯や、橈骨輪状靭帯があります。
上腕骨外側上顆炎の評価の前に、外側上顆付近の解剖を確認しましょう!
外側上顆周囲の組織
外側上顆に付着する筋は
- 長橈側手根伸筋
- 短橈側手根伸筋
- 尺側手根伸筋
- 総指伸筋
- etc
が挙げられます。
これらの起始は明確に分けることができす、共同腱として外側上顆に付着します。
共同腱の深層には外側側副靭帯、橈骨輪状靭帯がありますが、これらも外側上顆付近で融合しています。
引用元 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション(上肢・体幹)改訂第2版 [ 整形外科リハビリテーション学会 ] PP160 図1
外側上顆で融合した筋や靭帯は表層(1)から、深層(4)の順で▼以下のように、層構造となってます!
- 筋や靭帯
- 非石灰化繊維軟骨層
- 石灰化繊維軟骨層
- 骨膜
この辺の細かい解剖は覚えなくても良いと思います笑
筋や靭帯の動きに対抗したために起きる、非石灰化繊維軟骨層の損傷が外側上顆炎の初期病変だと知っていれば十分です!
カタ
短橈側手根伸筋
短橈側手根伸筋の起始は共同腱の最も深層にあるため、上腕骨頭の小頭と最も摩擦します。
また、関節ヒダが関節内に挟まりこむので、疼痛が出現するとも言われています。
つまり、上腕骨外側上顆炎を評価・理学療法していくうえでは、短橈側手根伸筋は外せません。
カタ
短橈側手根伸筋の触診
短橈側手根伸筋はリスター結節の橈側を通ります。
ストレッチングする際に方向がかなり大切なので、筋肉がどのように走行するか意識しよう!
カタ
方法
- 中指を外側上顆に最短距離で近づけることで、短橈側手根伸筋の収縮を確認する
- リスター結節の橈側で触診する
総指伸筋
総指伸筋は一つの筋ですが、停止する指により起始部が少し異なります。
総指伸筋の中でも、中指への繊維の共同腱は、他の3指へ停止する繊維より遠位から起始します。
そのため疼痛の原因になりやすいとも言われています。
総指伸筋の触診
方法
- 前腕回内位で示指と小指を屈曲させる
- 中指、環指のMP伸展で触診する
示指伸筋の触診
方法
- 前腕回内位で示指以外を屈曲させる
- 示指のMP伸展で触診する
上腕骨外側上顆炎の評価
疼痛が伸張痛か?収縮時痛か?、そして疼痛が生じている筋は何筋かを評価する必要があります。
まずは伸張で痛みが出る時に、何筋が原因かを鑑別しましょう!
カタ
伸張痛の鑑別
方法
- 肘関節伸展、前腕回内位とする
- 手関節掌屈、尺屈をして外側上顆に痛みが出るかを評価する
方法
- 肘関節伸展、前腕回内位とする
- 手関節掌屈、手指屈曲をして外側上顆に痛みが出るかを評価する
尺屈で痛みが強く出れば、短橈側手根伸筋、手指屈曲で痛みが強く出れば、総指伸筋が影響している可能性があります!
これから紹介するthomsen tet、middle funger test、chair testはどの筋の収縮時痛かを評価します!
カタ
thomsen test
方法
- 肩関節屈曲,肘関節伸展,前腕回内,手関節背屈,手指屈曲させる
- 手関節底屈方向に抵抗をかけて、疼痛がでるかを評価する
解釈
疼痛があれば短橈側手根伸筋の収縮時痛の可能性を考える
middle finger extension test
方法
- 肩関節屈曲,肘関節伸展,前腕回内,手関節背屈,手指屈曲させる
- 手関節底屈方向に抵抗をかけて、疼痛がでるかを評価する
解釈
疼痛があれば短橈側手根伸筋の収縮時痛の可能性を考える
方法
- 肩関節屈曲,肘関節伸展,前腕回内,手関節背屈,手指屈曲させる
- 手関節底屈方向に抵抗をかけて、疼痛がでるかを評価する
解釈
疼痛があれば短橈側手根伸筋の収縮時痛の可能性を考える
chair test
方法
- 肘関節伸展,前腕回内位で椅子を持つ
- 上腕骨外側上顆付近に疼痛がでるかを評価する
注意点
椅子を持ち上げる際に、体幹伸展で代償しないように!
リハビリ室にちょうどいい椅子がないという人は、▼以下のような別法もありだと思います。
この際も、前腕を回内位で行うようにしましょう!
別法は研究などで示されているわけではないのですが、信頼性があるとは言えないかもしれませんが、上腕骨外側上顆に再現痛があるかの確認には使えます!
カタ
橈骨輪状靭帯の評価
伸筋は外側上顆だけでなく、橈骨輪状靭帯からも起始します。
また、橈骨輪状靭帯の制限によって、前腕の可動性が制限されることもあるので、前腕の可動性も評価しましょう!
方法
- 肘関節伸展位で、前腕を回内させる
- 左右同時に行い、左右差がないかチェックする
解釈
橈骨輪状靭帯の伸張性の低下が考えらえる
注意点
肩関節の内旋で代償していないかを確認しましょう!
グリップ動作での評価
グリップ動作でも肘関節屈曲か、肘関節伸展かで関与する組織が変わってきます。
肘関節屈曲位のグリップ動作で疼痛はないが、肘関節伸展位でのグリップで疼痛がある場合は筋の収縮だけでなく、橈骨輪状靭帯を含む、外側側副靭帯の影響が考えられます。
だから、橈骨輪状靭帯の評価もするんだね!
新人理学療法士
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の理学療法
今まであげてきた評価と動作から筋肉が問題か?靭帯が問題か?を考えて理学療法を行っていきます。
上腕骨外側上顆炎の理学療法のメインは伸筋のストレッチングです。
しかし、適当に掌屈しても、伸筋は伸びません。
しっかり筋の走行をイメージして、狙いの筋をストレッチングする必要があります!
短橈側手根伸筋のストレッチング
thomsen testで陽性になった場合は、短橈側手根伸筋の収縮時痛が原因と考え、短橈側手根伸筋のストレッチングを行います。
方法
- 前腕回内、手関節掌屈・尺屈位でロックする
- 前腕、手関節の位置をロックしたまま、肘関節を伸展する
注意点
起始部に牽引ストレスが加わらないように、筋腹を起始部に少し寄せる
リスター結節の橈側を短橈側手根伸筋が通るイメージでストレッチング
総指伸筋のストレッチング
middle finger extension testであれば、中指の収縮時痛が原因と考えられるので、総指伸筋の中指の繊維を狙ってストレッチングします。
また、中指と示指の繊維が連結していることも多いので、評価の基、総指伸筋の示指の繊維もストレッチングしましょう!
方法
- 手指屈曲、手関節掌屈位でロックする
- 手指、手関節の位置をロックしたまま、肘関節を伸展する
注意点
起始部に牽引ストレスが加わらないように、筋腹を起始部に少し寄せる
リスター結節の尺側を総指伸筋が通るイメージでストレッチング
橈骨輪状靭帯の伸張性低下の改善
どの評価結果をもとに、橈骨輪状靭帯の伸張性にアプローチすると考えるんですか?
新人理学療法士
- 肘関節伸展位での前腕回内に左右がある
- グリップ動作が屈曲位では疼痛ないが、伸展位では疼痛がある
橈骨輪状靭帯の伸張性が低下していると可能性があると考えます。
カタ
方法
- 前腕回内させて、橈骨輪状靭帯の伸張感を感じる
- 肘関節伸展、内反させる その際に、橈骨輪状靭帯がより伸張されるのを感じる
注意点
肘関節を内反する際に、肩関節が内旋しないように
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)のまとめ
上腕骨外側上顆炎の症状
- 安静時痛はないことが多い
- テニスのボールを打つ、ラケットを振るといった動作での痛み
- 物を持ち上げたり、タオルをしぼったりする動作での痛み
上腕骨外側上顆炎の病態
- 明確な原因は不明だが、オーバユースが理由と言われいる
上腕骨外側上顆炎の評価
- 筋の伸張痛の評価
- 筋の収縮時痛の評価
- 橈骨輪状靭帯を含む靭帯の評価
上腕骨外側上顆炎の理学療法
- 短橈側手根伸筋のストレッチング
- 総指伸筋のストレッチング
- 橈骨輪状靭帯の伸張
今後も、臨床で経験する疾患に対して、分かっている事実とカタ(@katalogpt)の私見を交えてお伝えします!