長時間のアイシングは逆効果!リハビリ・スポーツ現場でのアイシングについて

アイシングはスポーツをしている人や、一般の人でも聞いたことがあると思います。
1978年にDr.Gade Mirkinが提唱して以降、日本でも怪我や、スポーツをした後にアイシングを行うことは一般的になってきました。
私も、アスレティック・トレーナーの養成課程でアイシングを勉強しました。
リハビリテーションやスポーツ現場で、多く利用してきたアイシング!
しかし、最近では『本当に有効なのか?』ということが言われています。
それでも心情的にはアイシングしたくなりますよね。
今回は、現在言われているアイシングのメリット・デメリットについてお伝えして、実際の現場ではどのように活用しているかを書いていきたいと思います。
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アイシングとは
アイシングとは、主に炎症を抑えるという意味合いで使われてきました。
では、主にどのような時に使われてきたのでしょうか?
そこでRICE処置という言葉が出てきます。
RICE処置とは
私たちは怪我をしたスポーツ選手や、術後の急性期にRICE処置を行ってきました。
RICE処置とはRest・Ice・Compression・Elevationの頭文字をとってRICEと言います。
以下にまとめます。▼
- Restは安静を意味し、全身・局所の血液循環を抑えます。
- Iceは冷却を意味し、局所の熱感を下げます。
- Compressionは圧迫を意味し、内出血が広がらないように行います。
- Elevationは挙上を意味し、物理的に患部を高い位置に起き、血流を抑えます。
過剰な炎症を抑えるという目的で、RICE処置は行われてきました。
炎症とは
そもそも炎症とは?
炎症の徴候
- 発赤
- 熱感
- 腫脹
- 疼痛
- 機能障害
炎症は上記のような徴候の総称です。
我々、理学療法士は炎症は悪と捉えることが多いと思います。
組織の修復課程では、炎症は必須です!
炎症は身体にとって悪いものではないと言うことです。
アイシングのデメリット
アイシングは血流を滞らせ、さらに神経や靭帯や筋にダメージを与えてしまいます。
さらには、スポーツ選手においては、パフォーマンスを低下が見られることも報告されています。
また、アイシングをし過ぎることで、凍傷のリスクもあります。
アイシングによるデメリット1 血流の阻害
炎症を低下させるのに、マクロファージからIGF-1(Insulin-like Growth Factor)が放出されて、血液を通りダメージを受けた細胞に送られます。
IGF-1(Insulin-like Growth Factor)は靭帯や筋の修復に必要な物質で、早い回復には血流増加が必要です。
アイシングすることにより血流が減少し、回復を阻害してしまい、慢性的な疼痛の可能性を高めることとなってしまいます。
また、アイシングによって血管が収縮することにより、血管が再び拡張するのに数時間かかるとも言われています!
アイシングによるデメリット2 靭帯の強度の低下
靭帯はもともと、血流量が少ない組織です。
アイシングにより血流が阻害されると、靭帯の回復だけでなく、靭帯の役割である強度そのもの低下してしまいます。
靭帯損傷があったからといって、むやみにアイシングするのはやめたほうがいいですね!
ハヤシ
また、筋組織や筋膜もIGF-1(Insulin-like Growth Factor)の活躍により回復します。
さらに、アイシングのより浮腫が助長されてしまい、さらに回復を遅らせてしまします。
本来の回復課程をアイシングにより、阻害させてはいけません。
アイシングのメリット
そんなアイシングですが、もちろんメリットもあります。
それは「短期的効果として、疼痛レベルを低下させること」
つまり痛みの緩和ですね!
冷却によって、神経を麻痺させることによって疼痛閾値を変化させると言うことです。
この効果は、使い所によってとても役に立ちます。
本来の回復課程では、炎症反応を抑えることはよくないですが、痛みの閾値を上げることによって、早急に競技に復帰することができます。
注意点として、長時間のアイシングを行うことは避けたいですね。前述した通り、組織の修復の邪魔になるので、最小限に抑えましょう。
また、再び競技に復帰する際には、パフォーマンス、怪我の予防も含めて、ウォーミングアップを行いましょう!
ハヤシ
アイシングの実際
それでも痛がっている選手や患者さんを放っておけないのも事実!
ここでは、組織の回復を阻害しない程度にアイシング(疼痛緩和)を行うなら、どのようにするかを伝えていきます。
アイシングの適切な時間とは
過度なアイシングは避けましょう。
では具体的に冷却時間や頻度はどのくらい必要なのか?
1980年のthe American Orthopedic Society meeting、1981年のthe Louisiana State University School of Medicineの内科医は、過度な冷却によって神経麻痺が起こった。
と報告しています。
ここでは、20分以上のアイシングは神経や組織の損傷を伴う可能性があるので、避けるべき!としています。
またDr.Gade Mirkinは20分以上のアイシングにより、パフォーマンスの低下が見られる!
と報告しています。
疼痛緩和を目的としたアイシングを行ったとしても、
必ず20分以内のアイシングにしたいですね!
ハヤシ
アイシングするなら氷で行う!それとも・・・
さてアイシングで使う素材としては何が有効でしょうか?
ズバリ氷が一番適切だと思います!
しかも0度に近い氷です!
ドライアイスなどと比較すると、氷は格段に融解熱(個体から液体にに変わる時のエネルギー)が高いです。
つまり、氷でアイシングを行う方が冷却効果が高く、疼痛緩和に適切と言うことになります!
アイスノンなどの保冷剤は凍傷のリスクが上がるし、あんまり冷えないので、完全に組織の回復の邪魔をしていますね!
ハヤシ
アイシングの頻度
私がアスレティック・トレーナーの養成課程でアイシングについて習った時は、怪我の受傷後1〜2時間おきに1回行い、この間欠的なアイシングを24〜72時間適応するとのことでした。
しかし前述した通り、組織の回復を妨げるかもしれないアイシングを、受傷後1〜2時間おきに1回、それを24〜72時間適応すると・・・
めちゃくちゃ回復することの邪魔してますよね!
スポーツ現場での私の対応は、程度によりますが、受傷後に評価を行い痛みを伴う場合にアイシングを含めたRICE処置を行うようにしています!
なんでもかんでも、アイシングしないように心がけています!
特に意識いていることは、アイシングよりも、患部を安静にして、痛くない範囲での患部外の運動を比較的早期から行うようにしています。
足関節捻挫なら、足関節は固定し、痛みのない範囲で足趾の運動を行います。
ハヤシ
まとめ
当たり前のようにやっていたアイシング!
今回は、アイシングのメリット・デメリットを解説して、それを踏まえた上で、実際にどのようにリハビリテーションやスポーツの現場で使っているかをお伝えしました。
アイシングのデメリット
- 血流を滞らせ、組織の回復を遅らせて、慢性的な疼痛の原因となることがある
- 凍傷のリスクあり
- 神経麻痺のリスクあり
アイシングのメリット
- 短期的な疼痛緩和
今までは、痛い・熱感ある=アイシングでした。
正しく炎症を理解し、炎症を悪者にしないで、今までなんとなくやってきたアイシングに、理由をつけて行うようにすることを心がけましょう!
特にスポーツ現場では、特に急性期の怪我に出会うことが多くあると思いますが、アイシングによる身体の反応を知った上で、適切にアイシングを使いこないしたいですね!
臨床の参考になれば幸いです。
参考文献
sportsmedicine 2015年 No.171
公認アスレティックトレーナー専門テキスト第8巻 救急処置 第1版