【寝ている時に肩が痛い】夜間痛に対する適切な対処について

夜寝ている時に、肩が痛くて、寝られません。
寝返りで、痛い肩が下になった時に、痛くて起きてしまうのですが、どうしたいいでしょう?
50代女性
患者さんからの訴えでよく耳にする夜間痛。
肩関節周囲炎(五十肩)に限らず、肩腱板損傷などでも、夜間痛を訴え患者さんは多いです。
そして夜間痛のある方は、同時に拘縮がみられるケースが多いのも特徴です。
私はこれまで、「肩」を専門的に診ている病院で、「夜間痛」のある患者さんをたくさん担当してきました。
最初は私もうまくいかないことばかりでしたが、何度もを繰り返し「夜間痛」の方と真剣に向き合うことで、ようやくわかってきたことがあります。
それは、
「ポジショニングの大切さ(肩関節の)」です。
あなたは、ポジショニングを軽視したりしていませんか?
理学療法士はどうしても、自分の手で何とかしようと、いろいろなアプローチを試みます。
(私も最初はそうでした。)
でも試行錯誤しているうちに気が付いたんです。
夜間痛のある時期に、徒手であれこれするよりも、正しい肩のポジションを指導することに時間を使う方が、よっぽど効果が高いと。
今回は、夜間痛の患者さんを多くみる機会がある私が、「夜間痛」の方への対応策を、実体験をもとに書いていきたいと思います。
読みたいところから読む
夜間痛とは?
夜間痛を生じさせているのは、第2肩関節(烏口肩峰弓)の圧の変動が関係しています。
座位や立位では上肢の重さによって、第2肩関節(烏口肩峰弓下)の間隙が拡大しますが、背臥位や側臥位では第2肩関節(烏口肩峰弓下)の圧が上昇しやすい姿勢となります。
烏口肩峰弓靭帯の切離術によって、劇的に夜間痛の症状が改善するという報告もあります。
ハヤシ
夜間痛を引き起こす第2肩関節(烏口肩峰弓)とは?
第2肩関節について、簡単に説明します。
▼
出典:信原克哉:第4版 肩ーその機能と臨床 pp37 図4–15
第2肩関節(烏口肩峰弓)を構成しているものとしては
- 肩峰・烏口肩峰靭帯・烏口突起
- 肩峰下滑液包
- 腱板筋・上腕二頭筋長頭腱
- 上腕骨骨頭(大結節)
特に腱板と肩峰下滑液包の間に癒着が見られます。
ハヤシ
夜間痛の発生のメカニズム
林典雄先生は、夜間痛の発生要因を▼のように2つに分類して示しています
出典:整形外科リハビリテーション学会 編:改訂第2版 関節機能解剖に基づく整形外科運動療法ナビゲーションー上肢・体幹 pp26 図1
我々理学療法士は、疼痛のポジショニングや、拘縮除去に対してアプローチできますね。
ハヤシ
夜間痛に伴う拘縮とは
拘縮ってよく言われているけど、どんなものなんだろう??
新米理学療法士A
理学療法士の臨床実習で、バイザーから「拘縮しているね」と言われましたが、イマイチわからない・・・
ここで一度、拘縮について考えてみましょう!
拘縮の定義と分類
拘縮は「皮膚や骨格筋、腱、靭帯、関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限」
引用:関節可動域制限 第2版 ー病態の理解と治療の考え方ー 著者 沖田実
拘縮については▲のように、著書で沖田実先生は述べられています。
拘縮の分類としてはHoffaの分類が有名ですね。
- 皮膚性拘縮
- 結合組織性拘縮
- 筋性拘縮
- 神経性拘縮
- 関節性拘縮
夜間痛を伴う肩関節の拘縮
Hoffaの分類から考えると、痛みから逃れたい肢位が長時間続く発生する拘縮を、神経性拘縮の中の反射性拘縮と言います。
反射性拘縮に対しては、まず疼痛管理を行う必要がありますね。
そのため、ポジショニングが大切となってきます。
関節周囲軟部組織の器質的変化とはコラーゲン線維の変化が主です。
これらを改善させるためには、繰り返しの治療が必要です。
ハヤシ
夜間痛に対する理学療法
夜間痛がある肩の痛みを訴える患者さんには以下の事に注意しております。
- 炎症を抑えるようにするポジショニング
- 局所安静に伴う二次的な拘縮の予防
夜間痛に対するポジショニング
背臥位になると、肩が浮いています。
そのスペースにタオルなどで、埋めてあげると、肩関節周囲の筋の緊張が落ちます。
悪い例▼
良い例▼
痛い側を下に側臥位になると、肩関節のポジションによっては第2肩関節(烏口肩峰弓)の圧が上がります。
それによって夜間痛が発生して、寝られないという状況になってしまいます。
また、痛い側が上の時も痛い事があるので、クッションなどを抱きながら就寝するように指導します。
理学療法として、ポジショニングは常識的な事ですが、患者さんは気づいていない事が多いです。
治療の限られた時間の中でも、就寝姿勢に対しての指導には時間を割きたいですね!
ハヤシ
夜間痛により生じた肩関節拘縮の除去
第2肩関節(烏口肩峰弓)の圧を低下させるために肩甲帯を下方回旋させて、疼痛を回避する姿勢が特徴的です。
この姿勢では、肩関節は外転位となります。
肩関節外転位により棘上筋や棘下筋が短縮位となり、その状態のままでいると肩峰下滑液包との間で癒着が生じ、滑走性の低下が起こります。
アライメントとしては、痛い側の肩が下がっているように見えますね。
ハヤシ
肩関節内転の可動域獲得
棘上筋や棘下筋と肩峰下滑液包の癒着を改善し、肩関節内転の可動域を獲得していく必要があります。
このアプローチにより、第2肩関節(烏口肩峰弓)の圧を改善することができます。
出典:整形外科リハビリテーション学会 編:改訂第2版 関節機能解剖に基づく整形外科運動療法ナビゲーションー上肢・体幹 pp27 図2
肩関節内旋・外旋の可動域獲得
肩関節内旋・外旋することにより、第2肩関節(烏口肩峰弓)の組織の緊張を変化させることができます。
▼肩関節内旋
出典:整形外科リハビリテーション学会 編:改訂第2版 関節機能解剖に基づく整形外科運動療法ナビゲーションー上肢・体幹 pp27 図3a
▼肩関節外旋
出典:整形外科リハビリテーション学会 編:改訂第2版 関節機能解剖に基づく整形外科運動療法ナビゲーションー上肢・体幹 pp27 図3b
紹介した内容を組み合わせた、肩関節内転位での内旋・外旋運動も非常に有効です!
しかし、炎症が強い時期では痛みを伴うことも多いので、注意が必要ですね!
ハヤシ
まとめ
夜間痛の患者さんに対して、まず行うべきは疼痛の管理となります。
適切なポジショニングを行い、肩関節周囲の筋の緊張を取り除き関節にかかる圧を軽減させてあげましょう!
次に、拘縮を作らないように、痛くない範囲で可動域を獲得しておく必要があります。
痛みを伴う場合は、反射性拘縮を誘発してしまいます。
第1に痛みを伴わない、マイルドな可動域練習が大切です。
ハヤシ
その旨も患者さんに説明する必要がありますね。
こちらも患者さんも根気が入りますね!
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さんの臨床に少しでも参考になればと思います。
参考文献
1)沖田実:関節可動域制限 第2版ー病態の理解と治療の考え方ー三輪書店,2015.
2)整形外科リハビリテーション学会 編:改訂第2版 関節機能解剖に基づく整形外科運動療法ナビゲーションー上肢・体幹,メジカルビュー社.2015.
3)信原克哉:第4版 肩ーその機能と臨床,医学書院.2012